雲仙観光ホテル
建築年:1935年(昭和10)
所在地:長崎県雲仙市
日本初の国立公園に指定された雲仙に、「国の光を観る」の意から観光を名前に配して誕生した雲仙観光ホテル。戦後の進駐軍による接収時期を乗り越え、創業以来、当ホテルが思い描いてきた「心地よく暮らすホテル」は今も健在です。
特別室
1961年(昭和36)、昭和天皇皇后両陛下がお泊まりになられた特別室は、創業当時の趣のある佇まいのまま。応接家具やベッドをはじめ、すりガラス入りのパーテーション、ダイニングセット、造りつけの洋服タンス、サイドボード、ライトスタンドやダストボックスに至るまで、永田の家具がここに流れる豊かな時間を演出しています。
応接家具(特別室)
テーブルの表面は手間の掛かる寄木張り(木材の薄板を張り合わせて仕上げる工法。木目や色彩の微妙な変化が楽しめる。)で仕上げ、その美しさが映えるように特注のブラウンカラーのガラス天板を載せています。さらにソファはダブルクッション、ソファの肘掛けやテーブルの脚にも凝った繰りものが多用されるなど、4代目良一郎の下でデザインを担当した安田のこの応接家具へのこだわりが見られます。昭和50年代製作。
カップボード(ダイニングルーム)
ダイニングルームのカウンター奥にありながら、左右360cm、高さ240cmという実際の大きさ以上に存在感を放つカップボード。凝った彫刻が幾十にも施された上部の飾り棚は、カップボードがもともと高価な皿を飾るための棚であることを思い出させてくれます。ホテル創業時に製作したことから、3代目善従のデザインだと思われます。さらに、戦後、木の収縮からできる隙間を埋めるなどの修復を行ったと推測されます。
応接家具、花台(ロビー)
ホテルに一歩足を踏み入れると、木の温もりを感じる階段とその前に美しく生けられた四季の花が出迎えてくれます。生花の置かれた重厚感のある花台は、昭和50年代製作。周囲にはエンブレムのように唐草模様の彫刻が施されています。さらに、同様の彫刻が施されたパーテーションや1961年(昭和36)の天皇皇后両陛下のご宿泊に合わせてつくられた多くの応接家具がロビー各所で今も活躍しています。
ホテル各所に
雲仙観光ホテルのオリジナル商品などの土産物をディスプレイするショーケース、創業当時に存在し、2004年(平成16)の大規模改修工事で再現された図書室の椅子も永田製です。各所のサイドテーブルや電話台にも永田製のものが見られます。また、フロントカウンターはスイスシャレーの趣を残すべく、以前から使われていた丸太を生かして永田で改装しました。